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コラム

ドキュメンタリー番組の裏側。白い部屋の密着を経て番組スタッフは何を思う

新宿2丁目ニューハーフショーパブ白い部屋です。

2018年夏、テレビ局のドキュメンタリー番組で白い部屋の特集をしていただきました。

あれから一年半。

「番組で白い部屋を知ってお店に来てみました!」というお客様はいまだに多く、いかにテレビの反響が大きかったのかを再確認している日々です。

今回はその時の番組制作担当者である(株)ON SHOREプロデューサー杉本純子さんにお話を伺いました。番組として何を伝えたかったのか。取材を通じて何を思ったのか。白い部屋の表と裏に何を見たのかあらためて語ってくれました。

 

どのような経緯で、ドキュメンタリーとして取り上げることになったのですか?

私の友人に2丁目界隈に精通している方がいて、その方も私も美しいショーが大好きだからよく二人でショーの話をしていました。ある時「最近はまともなレビューショー(下記参照)をやっているところは宝塚くらいかしらね」と私が言ったら「実は2丁目にもあるんだよ」と教えてくれて、そして白い部屋に連れて行ってもらったのです。それが私と白い部屋との出会いになりますね。彼女たちのショーは圧巻で、見た瞬間からそれこそ虜になってしまって…。で、何とかこの世界を広く伝えられないかと思って、友人に番組化の相談をしました。

今までにも白い部屋の取材依頼は何回かあったみたいですが、コンチママは頑なに断っていたらしいのです。人前に出るのが苦手みたいで…。でも、友人とコンチママとの信頼関係があったので、彼の頼みということならとお受けしてくれました。今考えると、本当に縁があって実現した話だと思いますね。それからは、トントン拍子にいくかと思ったら取材早々にベテランのお姉さんが亡くなって、結局1時間のドキュメンタリーをゴールさせるまで2年間お世話になりました。

※レビューショー:装置・衣装・照明といった視覚的な要素に重点をおいたショー。音楽、舞踏、寸劇、曲芸などの演目を展開する。

 

制作担当者として白い部屋のどこをフォーカスしようと思いましたか?

私は本当にショーの部分に惹かれていたので、ショーができるまでの話や制作秘話みたいなものにフォーカスしたいと思っていました。番組にも登場しますが振付師の安河内先生はとにかくエネルギッシュで、キャストに対する愛と熱意そしてショーのクオリティに妥協しない姿勢など、何をとっても意識が高い。だから最初は安河内先生を軸に番組を構成していこうかと考えていました。

でも取材を進める中でショーの舞台裏もみるようになって、そこではキャストなりスタッフなりの白い部屋を取り巻く人間すべてに奥深いストーリーがあることがわかり、そっちも伝えたいと思うようになったわけです。

もちろんコンチママの魅力も伝えたかった。キャストの質もショーの質も保ちながらあれだけ長く続いていて、たくさんの人を魅了し続けているわけですから。でもそれは、ただ漠然とやっているわけではなく、人一倍努力もしているからであって、そういう堅実な部分にもフォーカスしたいと思ったわけです。さらにちょうど50周年を迎え、コンチママが将来を考えているタイミングだった事も新たなテーマになりました。

密着取材を進める中で新しい発見はありましたか?

これはリップサービスでもなんでもないのですが、取材を通じて良い発見しかなかったというのが本当のところです。象徴的だったのは、お店を辞めて独立した女の子をその後もずっと気にかけていること。新しい店を出したときには白い部屋のお義姉さんたち総出でご祝儀を持って駆けつけ、ママも辞めた女の子の相談にずっと乗ってあげている。関係が持続しているのですよね。だから何かあった時には帰ってくるのです。また白い部屋で働く子もいますし。こんなところはなかなかないですよ。普通は辞めてお店を出すと言ったら商売敵になるわけですからね。

コンチママはとにかく人を大事にしますね。店の女の子の精神状態や体調も常に心配していますし、一方で表舞台に立つプロのキャストとして自覚を持って良質なものを提供することも期待している。そしてお店の女の子たちもそれに答えようと頑張っている。その関係性はこの業界ではすごく新鮮で魅力的に見えました。

そういう発見が取材期間の2年という歳月の中で本当にたくさんありましたね。ママの愛と期待があって、みんなもそれに答えようと努力をしている。さらにいうと、努力をすることで自分とお互いを守っているみたいな空気感もありますね。店の繁栄が自分たちの生活に直結しているのでそこは死守しなくてはならない。そういう意味で共同体的なところもありますね。

 

一番印象的だったことは?

コンチママの人柄ですね。当初は「取材なんていやよ、撮らないで」と言っていたにも関わらず、ある時ママの自宅に取材に行ったら、もう心尽くしのもてなしをしてくれ、カメラにもサービスしてくれて…。商売柄サービス精神が旺盛だから。決して嫌な顔をしない人ですね。仕事で厳しい顔はするけれど、嫌な顔はしない。それは徹底していますね。

コンチママの取材では白い部屋の理念的な部分や今後の展望などを聞くことができてその話も印象的でした。50年店を守ってきて、その長い年月の中でビジネスとして大きくお店を展開するチャンスもありました。でもそれは違うと思ったわけです。自分の目の届く範囲でキャストを育てショーを創り上げる。きっと一人一人に対してきちんと心をかけたいのでしょうね。だから、お店を守るという意味で経営者としても堅実で無茶はしない方だと思います。この世界にいる人間はパァーっと派手に咲いてあっけなく散っていく、まるで桜のような生き様を美徳としているのではないかと思われがちですが、実際はそうでもないのです。少なくとも白い部屋のみんな違うと思いますよ。

 

制作担当者として一番伝えたかったことは何ですか?

さんざん話した後ですが、それらを踏まえてもやっぱりショーの素晴らしさですよね。ショーにかける情熱は、コンチママや安河内先生をはじめキャストもみんなも同様に高く持っています。だからお姉さんたちは人一倍努力をしていますね。その努力というのも“自分だけが上手くなって出し抜いてやろう”みたいなものではなく“みんなで上を目指そう”みたいな共通の認識によるものでそれが感動的でした。

取材期間中に一時期とてもかわいい顔立ちの子がいて、お店でも彼女を売り出していたのだけど、その子は踊りが得意じゃなかったんです。そうしたら先輩のお姉さんたちが空いた時間にみんなで彼女に踊りを教えてあげていました。自分の時間や労力を使って、完全に善意というかボランティア精神ですよね。そういうところが白い部屋らしいなと。彼女たちは外見を1ミリでも美しくしようという努力もしていますが、きっとそれは内面の美しさに下支えされているんだなと再確認しました。

他に、休みの日にもそれぞれが家の鏡の前で振り付けの練習をして、気付いた点や新しいアイディアなどがあったら「ここはこうしたほうがキレイに見えるんじゃない?」とすぐに安河内先生に電話をしていたこともありました。だから、あの美しいショーは一人一人の影の努力によって成立しているんだということも伝えたかったですね。

テレビとしてはびっくりするようなインパクトのある話の方が好都合なのですが、私が取材した中では温かいエピソードしかなかったですね。白い部屋は、そんな奇跡のようなお店なんだということを伝えたかったのが本音です。

 

―今日は、貴重なお話をありがとうございました。

白い部屋はお客様に喜んでいただくために一切妥協せずショーも接客も磨き続けてきました。

そのことが、2年間密着した杉本さんにも伝わっていたことがすごく嬉しく、改めて白い部屋に関わることができて良かったと思えるインタビューとなりました。

 

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